つかの間の休日を終わらせて、マイスターとしてまた4人は活動を再開する。
ソレスタルビーイングに反発する勢力の無差別テロを鎮圧させ、更にはその逸脱した武力を行使した所為で、各国の軍事運動が盛んになりつつあった。
それに対抗するために、怒涛のようなミッションスケジュールをこなす。
スケジュールの中、配置場所と人種の的確を受けて、刹那は故郷の武力介入に参加する事になった。
合流地点にエクシアを着地させれば、隣りにはデュナメスが格納されている。
暗い過去のある故郷に、恋心の威力は効かなかった。
作戦内容が指示される中、どうしても心が沈む。
散漫になりそうな意識を振り払うために、王留美が提供してくれたクルーザーから、単独行動を願い出た。
偵察には自分が一番適している事は解っていたし、また故郷がどう変わったのかも見たいとも思った。
「一人はあぶねぇだろ」
「問題ない。俺はこの国の出身だ。それにお前の容姿はここでは目立ちすぎる」
夫にそう言い渡して、一人でバイクに跨り街中に潜入した。
刹那の国は既に無く、国のあった地域は刹那が身をおいていた戦場と化していたので、既に生活が出来る環境は無くなっていた。
故に、情報を求めて刹那が足を踏み入れたのは、かつての敵国だった。
街中の生活レベルを見れば、刹那がいた頃のクルジスよりはマシに思えたが、それでも人々の目は苦しみを湛えている。
自分の外見を利用して、頭にターバンを巻きつければ、どこから見ても地元の少年だった。
だが、地元の人間にはわかってしまう雰囲気というものがある。
隣国の白人種同士が顔を合わせても、外国人であると認識できるように。
黄色人種同士が、国の違いに気がつくように。
同じように、刹那も今は統合されて故郷になったはずのアザディスタンで、クルジスの人間だと気がつかれてしまった。
非難の視線を浴びて、まだお互いの溝があることを認識して、静かに繁華街を去る。
それでも十分に情報は収集できた。
荒野に隠れるように着地させられていたクルーザーに戻り、与えられた部屋に入る。
王留美の気遣いが見える、刹那にはあまり馴染みのない、女の子らしい内装だった。
天蓋つきの柔らかいベッドで、ロックオンは先にシャワーを済ませたらしく、寛いでいる。
「おかえり。報告書、出来たら見せてくれ」
「……ああ」
簡潔に答えて服を脱ぎ、頭に巻いていたターバンも外せば、何とか自己を取り戻せたような気持ちになった。
シャワーを終えて部屋に戻り、手元に飲み物の無い夫の手元に、普段彼が好んでいる紅茶を差し出す。
ロックオンはちらりとソレを視界に入れて、「サンキュ」と当たり前のように礼を告げ、再び書面に視線を戻してしまった。
仲間の下に帰り着いて、更には夫と普段の交流をして、心の平安が戻るのを感じる。
落ち着いた気持ちで、刹那は端末に向かって報告書を作成し始めた。
一頻り打ち終わり、文章構成や記入漏れがないかをチェックし終わって端末の電源を落として振り返る。
二人にと整えられた部屋とはいえ、背後のロックオンの寝姿は酷かった。
この後刹那も同じベッドで眠るというのに、堂々と真ん中で目を瞑っている。
ため息をついて、大きな体を押しやろうと刹那がベッドに上がったところで、その手は寝ていると思っていたロックオンにとられた。
「……狸寝入りか?」
見せたブルーグリーンの瞳は、寝起きとするには視線がハッキリとしすぎていて、更には悪戯っぽく眇められる。
「……するだろ? なんたって二週間ぶりだ」
確かに久しぶりに会った夫と、何も考えずに睦みたい。
そうは思ったが、なんとなくこの土地では気が乗らなかった。
神の為に行っていた行動が思い出されてしまう。
この戦いは、神に捧げる聖戦である。
身の全てを神に捧げ、異教徒を排除せよ。
神の土地であるこの場所に、異教徒を立ち入らせてはならない。
純潔は神にささげ、己の相手は神のみであると戒めよ。
少年兵時代に、呪いの様に繰り返されていた言葉が頭に蘇る。
その言葉が洗脳であったと、今は理解している。
ユニオン軍に救出され、ガンダムを視認してしまった自分を迎えに来たCBの養護施設の教育官にも、先進国の文明的な考えを諭された。
それを経て、目の前の男に恋をして、更には婚約をして、書類の上でこの男に家族として守られている事も誇らしい事だ。
なのに、戦場の記憶の濃いこの場所では、過去の自分が己を責める。
とられた手に、少しの戸惑いを滲ませれば、夫は悲しそうに笑った。
「……思い出しちまったのか?」
「…………」
何を、とは、直接は言わない。
それが彼の優しさだと理解できる。
彼が昔の自分を知るはずも無い。
それでもこの国の出身である事を明かした事で、おそらくこの国の事情を知り、更には刹那の過去を想像してくれたのだろう。
宗教色の濃いこの国の、その住人であった刹那の事情を。
刹那は一度目を伏せて、過去を追い払うように頭を降った。
悲しそうな瞳をしている男に、自ら唇を寄せる。
「なんでも、ないんだ。大丈夫」
軽く唇を合わせた後、進んで夜の生活を求めた。
自分で風呂上りの軽装を脱ぎ捨てて、男に跨る。
ここに自分の今がある。
望んだ戦いに身を投じて、愛も得た。
過去は現在を確立させる為に存在し、今の自分を揺るがせる材料ではない。
そう言い聞かせながら、刹那は積極的にロックオンの下半身に顔を埋めた。
ロックオンは自身を高ぶらせる刹那を黙って見つめて、十分に女を愛する事が出来るようになった下半身を確認して、自分の体の上に乗っている小さな体を引き摺り下ろして組み敷く。
おそらく過去を考えている女に、自分の気持ちを悟られていない事を確認しながら、ロックオンもまた揺らぎそうな自分を誤魔化すために、愛情を感じている少女に縋った。
刹那が零した出身国。
派遣されたこの国は、ロックオンにとっても因縁のある国だった。
統合された、国名をなくした場所を孕む国。
その無くなった名前に、人生を狂わされた。
実際にはその国が排出した歪みにであるが、ロックオンの人生に影響を及ぼした事は変わりがない。
刹那の言葉に、一瞬だけ過ぎった思考は、当然刹那が『そう』であったのではないか、という物だった。
だが直ぐに、そんな筈は無いと考えを打ち消した。
表向きに活動するのが、宗教理念的に『男』であるというのは知識としてあった。
刹那は『女』である。
それに、刹那は『アザディスタンの出身』であると言ったのだ。
ロックオンの考える『クルジス』だとは言っていない。
この国全体を、そんな視線で見ることはいけない。
また、将来を考えた女がそんな筈が無いと、刹那が帰ってくるまで何度も自分に言い聞かせた。
だが、刹那が自分の元に帰ってきた時の男装に、正直ドキリと胸が嫌な鼓動を打った。
錯覚しそうになる。
自分の考えを『錯覚』であると、そう思い込みたかった。
刹那を組み敷いて、愛撫を返す。
施される愛撫に酔おうと努力している刹那に、助けるように何時もよりも激しい快感をあたえ続けた。
普段は挿入した後に補助的に施す後孔への愛撫を、女芯を舌と歯でなぶりながら執拗に指で繰り返して、本来の性交の為の場所へ熱を溜める。
刹那は満たされない女に泣き、ロックオンに縋った。
「おねが……ッ、も、おねが……いッ」
子供の宮に通じる道の裏側をくすぐられて、その快感に目からだけではなく女からも涙を流す。
シーツまで濡らすのではないかと思うほどの蜜を自分でも感じてしまい、羞恥と欲を言葉に乗せた。
滅多にない溺れる刹那の様子に、ロックオンの下肢も痺れるような感覚を得る。
己の状態と刹那の様子を見比べて、初めてロックオンは自身を刹那の女ではなく、後孔に挿入した。
「いや……! ソコ、じゃ……ッ!」
「いいだろ? ココでもお前、善がってんだからさ」
獰猛さを隠しもせずに耳元で囁いて、律動を開始する。
普段は奥まった柔らかい陰唇に吸収される衝撃は、外皮である尻にあたえられて、小さい体が激しく揺れた。
「や、ろっくおん! ソコ、やあ! あ、あッ、あう!」
パンパンと乾いた音が部屋に響き、常ではない性交の羞恥を煽る。
煽られた羞恥に比例するように、刹那の女の場所はロックオンを求めて激しく疼いて刹那を責め立てた。
「おねが、そこじゃ、なくてッ! 入れて、入れてぇ!」
「入れてるだろ? それにお前、凄い締めてるぜッ? きもちいんだろ? ココ、気持ちいいんだろッ?」
覆いかぶさって腰を振っていたロックオンは、泣く刹那の顔を隠すように挿入したまま刹那の体を裏返して、軽い体を持ち上げるように腰を支える。
勢いよく注挿を繰り返しながら、背後からの体位に動かしやすい体全体を使って、刹那の全てを犯す。
身長差の分、刹那はロックオンが指示するように掲げた腰の位置を保つように、嫌々と首を振りながらも足を突っ張らせて体を浮かせる。
その刹那の体制は、本来の場所に挿入してもらいたい表れだったが、ロックオンはその事に気がつきながらも刹那の体を更に抱え上げ、背後から抱きしめるようにベッドに腰を下ろす。
自重も合わさった深い交わりに、更には性器をさらけ出させるように開かれた足に、刹那は快感と羞恥を更に募らせてしまう。
下から突き上げながら、ロックオンの足にまで刹那の蜜が垂れ伝った事を感じて、ロックオンは更に刹那を弄ぶ様に、刹那の望む女は放置して、女芯を指でひねりつぶした。
「いやあぁあああ!」
あまりの快感に、体が跳ねるのを抑えられない。
ぐっと反った体制に、刹那は自分の意思とは別の場所で、ロックオンのペニスを腸壁越しに膣に押し付けた。
「ぁッ……すげ……」
陶酔しているロックオンの声が刹那の耳に届き、彼の快感を更に自分の快感へと変換してしまい、一気に絶頂へと駆け上がった。
「いく、いく、ろっくおん、イくッ!」
手の届きそうな頂に、普段とは違うものを感じながらも訴えれば、ロックオンの指は更に刹那の女芯に絡み、後孔への突き上げも激しさを増す。
「や、い、イクの! イクイクッ……イく―――ッ!」
絶頂を叫んだ刹那の声の大きさに合わせるように、刹那の性器から勢いよく粘度の低い透明な蜜が吐き出された。
シーツの色を変える程の体液に、刹那は出したものを認識せずに、下肢を濡らす感覚に排泄と勘違いして放心してしまう。
羞恥も度を越してしまい、もう快感に変換される事もなく、揺らされる体を男に任せた。
「イク……俺も、出るッ」
自分の快感を追って激しく刹那を揺さぶり、ロックオンは滅多にない体内への射精の感覚に酔った。
刹那の体内に放つ快感は、ソコが例え射精しても意味の無い場所だとしても凄まじく、何度かに分けて大量に自分の遺伝子を注ぎ込む。出し切った後もその征服感に陶酔して、小さな体を抱きしめて体を震わせた。
荒い息をついて一頻り快感を楽しんだ後、ロックオンはシーツを濡らす刹那の感じた激しい快感の表れに笑みを零す。
「凄い量出したな」
耳元でからかう様に囁くと、刹那は体中を赤く染め上げて、涙を流した。
愛している男にこんな醜態を見せるなど、死にたいと思うほどの羞恥だった。
刹那の涙の理由を快感の所為だと思い込んだロックオンは、頬を伝う水滴を唇で拭いながら、既に乾き始めているシーツに指を滑らす。
「や、だめだ、汚いッ」
まだ体を拘束されている刹那は、自分の粗相に触れるロックオンを口でとがめた。
「お前だって舐めてるだろ。潮の成分ってザーメンと一緒らしいぜ?」
「……しお?」
尿だと思っていたものを別の名前で言われて、刹那はことりと首を傾げた。
「あ……お前、もしかしてオシッコだと思ったのか?」
刹那の反応にロックオンが問えば、刹那は再び真っ赤な顔を伏せる。
成る程と納得して、ロックオンは笑った。
「オシッコじゃないよ。お前、普段からたまに潮吹いてるんだぜ? 気がつかなかったか?」
ロックオンの言葉に、刹那はフルフルと首を横に振る。
普段のセックスの際にも、刹那が分泌させている液体を感じていたロックオンは、経験の中からそれが何であるかを当然悟っていて、己が射精するのと同じように、刹那も射精感に似たものを感じているとずっと思い込んでいた。
だが、一般的な女性がそれに気がつくことなど殆どなく、刹那も当然気がついていなかったのだ。
男女の体の違いを改めて認識して、ロックオンは笑う。
「すげぇ感じたんだろ? 俺のチンポ、ケツに銜えて潮吹いてさ」
「やッ……」
赤裸々な言葉に、刹那は再び酷い羞恥に襲われて、抱き込まれている体を捩る。
刹那の恥らう姿に再び欲望が体に沸くのを、ロックオンは楽しむ。
そうだ。
こんなに愛しい女が、自分の人生を狂わせた人間の筈がない。
心の中で再認識させて、後孔から自身を引き抜いた。
軽い体を持ち上げて、再びシーツに沈める。
「今度はちゃんと、お前の疼きまくってるココに突っ込んでやるよ」
ぐっと二本の指を刹那の女穴に突き入れて、二人の関係を知っている王留美が用意したのだろう、枕元にセッティングされていたコンドームに手を伸ばした。
だが、その手を刹那が阻む。
ロックオンが刹那に視線を送れば、刹那は目を伏せて懇願するように訴える。
「頼む……今日は、ナシで……」
子供が欲しい。
今を生きる証として。
これから先の未来の指針として。
その願いを込めて刹那はロックオンに請う。
関係を結んだ時から望んでいる事を、刹那は今日は更に強く感じた。
「……ダメだ。お前今日、危険日だろ。この後だって仕事は山ほど控えてる。妊娠なんてしてる場合じゃない」
訴えられた事を現実を見せて却下して、ロックオンは普段どおり愛情の交換の為だけの準備をした。
ロックオンとて、中に思う存分注ぎ込みたい気持ちは当然ある。
男として、更には再び身近に感じるようになった死に、以前よりもそういった願望が強くなっているのは自覚している。
それでも子供に対しての夢もあり、現実問題、この状況でマイスターを一人でも戦場から脱落させるわけにもいかない。
反論させる暇を与えないように、性急に刹那の中に身を沈めた。
「あぁ……ッ」
散々焦らされた胎内に、望んだ男の熱を受け入れて、刹那の希望も喉の奥に封じられてしまう。
そして訪れる快感の嵐。
抱き合い、素肌を重ねる充足感に身をゆだねれば、今いる場所も見えなくなる。
縋るように、溺れるように。
二人で現実を遮断するように、一晩中求め合い続けた。
それでも朝が来れば、否が応でも現実に引き戻される。
刹那が情報を集めれば、ソコには自分の過去に関わるものが存在していた。
どうしても振り切れない過去に、それでも今のやるべき事を優先させる事が出来たのは、刹那の心の奥に打ち込まれた今の幸せだった。
同じ状況の子供はもう、作りたくない。
内紛を鎮圧させる際に、MSのモニター越しに見た故郷の風景は、自分がいた頃となにも変わりは無かった。
銃を手にした子供の死体が転がる地面。
鉄の装甲を持つ相手に、自分の命をかけて挑む少年兵たち。
彼らの未来を、男に愛されて母性を覚えた体が自然と望んだ。
だから、自分が知っている諸悪の根源であろう人物のアジトを連絡する事に、躊躇など覚えなかった。
その事で何が起こるのかなど、求めている希望の前には些細な事だった。
そしてまた、何かが起こるなど、考えもしなかった。
ましてや自分の生活に及ぼす影響など、考えることなど出来なかった。
原作では兄貴が気がついている気配は私には感じられませんでしたが、気がつかないはず無いよね、との妄想をプラスです。
あれ、ちょっと反応してたっけ?(汗)。粗末な脳みそですみませんすみませんっ!
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