Find happiness within <和希>




和希は今自分の置かれている状態が信じられなかった。
「かずき。」
ギシッと音を立てるベットのスプリング。
瞼を熱く潤ませて自分の名前を呼ぶ啓太。
「け、啓太?」
「ね、かずきっ。・・・お願い。」
いつも、和希が啓太を求めてばかりで、
啓太が自分から求めてくるなんて初めてかもしれない。
「か、ずきっ、お、れっ」
あまりにもうれしい状態に、あっけにとられていると、
啓太の顔が近づいてきて、ペロリと唇をなめていく。
「おれっ、和希が好きっ、だからっ。」
唇がふれあうぐらい近い距離で、
「だからっ、・・・・し、てっ。」
愛しい啓太にそんなお願いをされれば、なけなしの理性は
あっと言う間に無くなってしまって。
「啓太っ。」
もどかしい距離を埋めるために引き寄せると、
啓太に深く口づけた。
促すように唇を舐めれば、
啓太の唇が少しだけ開いて、その隙間を縫って舌を滑りこませる。
「ん・・・はっ、ん・・・」
いつもより余裕なく啓太の舌を捕らえ、強く吸い上げれば、
啓太の口から甘さを含んだ吐息が漏れてくる。
そして名残惜しげに唇を離すと、啓太のシャツを一気に剥ぎ取り、
今度は首、鎖骨と、口付けていく。
「あっ・・。」
口付けを落とす度、啓太の体はピクッと跳ねて。
その反応が愛しくて、胸にある突起を口に含んだ。
「・・んっ・・ぁっ・・・かずき・・さ、ま」
・・・・・え?




「和希様。お目覚め頂く時間です。」
「!!」
あまりにも驚いてガバッとベットから身を起こせば、
そこにはいつもの秘書が背筋をピシッと伸ばして立っていた。
(まさか・・・夢、か・・。)
和希は現実とのギャップにはぁ〜と大きなため息をついた。
「おはようございます。そろそろ準備をなさらないと。午前の会議に間に合いません。」
「あ、ああわかった。すぐ準備するよ。」
まだドキドキする心臓を悟られないように努めて冷静に返事をすれば、
何事も無いように秘書はペコリと一礼して部屋を出て行った。
(あんな夢を見るなんて余程俺は欲求不満なのか?)
和希が、どうしても出席しなければいけない会議があって、
ロンドンに来てからもう1週間になる。
「け〜た〜、会いたいよ〜っ。」
こんな姿を、和希のあの秘書が見たら、どう思うだろうか。
想像しただけでも、和希の顔に苦笑が浮かぶ。
「・・・啓太に電話しようかなぁ。」
せめて声だけでも聞きたくて、
携帯電話を取った瞬間、
その携帯電話が鳴り出した。
「ん?誰だ?」
パカッと二つ折りのそれを開いて、
表示を見れば、
「啓太?」
和希が仕事で出かけている時、啓太は遠慮して絶対に電話はかけてこないのに。
何かあったのかと、あわててボタンを押してみたけど、
電話越しに聞こえる啓太の声は落ち着いていて。
『和希?』
「うん、どうしたの?啓太。」
『今、忙しい?電話してて大丈夫?』
「大丈夫だよ。もし大丈夫でなくても、啓太の為なら大丈夫にするよ。」
『もう、和希ってば。』
顔は見えなくても声だけで啓太が頬を膨らませているのがわかって、
つい顔が綻ぶ。
「電話してくれて、うれしいよ。」
『・・・・』
「啓太?」
『あのね、和希。いつ帰ってくる?』
「う〜んそうだな〜、あと2日もすれば帰れるんじゃないかな。」
『俺今凄く、和希に逢いたい。』
電話越しでも啓太の声が震えているのがわかる。
「啓太・・。」
『我侭だって分かってるけどっ。逢いたいっ。ごめん!こんな事言って。』
「我侭なんかじゃないよ、むしろすごくうれしいぐらい。」
実際うれしすぎて、顔がにやけてしまうのを抑えられない。
『あのね、俺和希の邪魔になってない?俺は和希の負担じゃない?』
「・・・啓太が邪魔なんてそんな事あるわけないだろ。」
啓太は、和希に無くてはならない人なのだから。
『和希はいつも俺の事考えてくれてて・・。なのに俺、和希に何にも出来ないから。』
「啓太は、俺の傍に居てくれるだけで十分。あ、でももっと甘えてくれると
いいな、とは思うけどね。」
正直な気持ち、和希に遠慮してあまり甘えてくれない啓太に寂しさを感じることすらある。
『和希っ!』
「本当にうれしいよ。電話してくれた事も、会いたいって言ってくれた事も。
俺はどうしようもなく啓太の事が好きなんだから。」
『もう!和希っ。』
「好きだよ、啓太。」
何度言っても足りないぐらい、言葉では表しきれないぐらい、好き。
『・・・和希』
「ん?」
『俺も、和希が好き。・・・だから、和希、帰ったらっ、その・・・し、て?』
今日ほど和希は自分の耳を疑った事は無い。
「・・え!け、啓太?い、今なんて??もう一回言ってっ!!」
『!!二回も言えない!も、もう電話切るからっ。おやすみっ!』
和希が待ったを言う前に啓太との通信は切れてしまっていた。
(これは夢じゃないよな。)
あの啓太が、自分から求めてくれるなんて、
あれは夢で絶対ありえないだろうと思っていたのに。
今朝見た夢の濡れた瞳の啓太がフラッシュバックしてくる。
和希は躊躇いも無く、もう一度携帯電話のボタンを押し始めた。
電話をかけたのはもちろん啓太ではなく
「俺だ、今から日本に帰る。準備を頼む。会議?ああ、俺無しで構わない。
それが気に入らないならこの話は無しだと伝えてくれ。じゃあ頼んだよ。」
ピッと容赦なく電話を切ると、和希は持ってきた必要最低限のものを自分の鞄にしまい込む。
(啓太、待ってろよっ。)
突然帰ってきた和希を見て、どんなに啓太はびっくりするだろう。
慢性の啓太欲求症候群である和希は、滅多に見せない軽い足取りで
ロンドンの部屋を後にしていた。






もうっ!こんな腐れた和希(え)がいただけるなんて!!感無量ですわ!しもかわさま!我が人生に一遍の悔い無し!!サマンサ今死んでも大丈夫っス!!
引き続き啓太バージョンもお楽しみ下さい。
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