Find happiness within <啓太>

啓太は今自分のしている事が信じられなかった。
「かずき。」
ギシッと音を立てるベットのスプリング。
じっと自分の事を見つめる和希。
「け、啓太?」
いつも余裕の和希が焦っているようで、少しおかしい。
「ね、かずきっ。・・・お願い。」
いつも、和希がそうゆう雰囲気を作ってくれるから、、
啓太が自分から求めるなんて初めてかもしれない。
「か、ずきっ、お、れっ」
すごく恥ずかしいはずなのに、早く和希に触れて欲しくて、
和希を煽るように唇をペロリと舐めた。
「おれっ、和希が好きっ、だからっ。」
唇がふれあうぐらい近い距離で、
「だからっ、・・・・し、てっ。」
啓太が精一杯自分の気持ちを伝えたら、
「啓太っ。」
気持ちが触れたところから伝わったのか、和希は噛み付くように口付けをしてくれて、 促すように唇を舐められれば、 促されるまま唇を少しだけ開いて、するとその隙間から和希の舌が滑りこんでくる。
「ん・・・はっ、ん・・・」
舌を捕らえ、強く吸い上げられれば、
啓太の口から漏れるのは甘さを含んだ吐息ばかりで。
息苦しさに離れていく唇が名残惜しくて、和希の背中に手をまわそうとすると
シャツを一気に剥ぎ取られ、
離れていった唇は今度は首、鎖骨と、口付けていく。
「あっ・・。」
口付けを落とされる度、そこから下半身に痺れる様な感覚が生まれる。
感じてしまっている自分が酷く恥ずかしくて、啓太が体をよじれば
和希は、胸にある突起を口に含んできた。
「・・んっ・・ぁっ・・・かず、き。」
「── うくん、伊藤くん、起きて下さい。」
── え?

まさにパチリ、と目が覚めた。
「・・しちじょうさん?」
「はい。」
いつもの笑みを浮かべて、七条が顔を覗き込んでいた。
啓太は、放課後会計室のお手伝いに来たけれど、 あまりにもいい陽気で、ついうとうとと、ソファーで眠りについてしまった様だ。
「ご、ごめんなさい!俺、お邪魔でしたよね。」
「いえ、お邪魔なんて事はこれっぽっちも無いんです。
伊藤くんの寝言があまりにも悩ましげで、
僕が、伊藤くんに触りたくなってしまって。
すごく気持ちよさそうに寝ていたから、
起こすのは忍びなかったのですが。」
すみません、なんてニッコリ七条は笑うけど。
(寝言?)
啓太は、一瞬考えたが、夢の内容を思い出したとたんボンッと頭の天辺まで赤くなった。
「う、あ、あのっ、ねね、寝言って・・・」
あまりにも動揺してしまって、呂律が回らない。
「ええ、今日ほど郁が此処に居なくて良かったと思った日はありません。」
「!!し、七条さんっ!」」
「そういえば遠藤君は学校をお休みしてるんでしたね。たしかロンドンに行っていると。」
夢の中を見られていたなんて、そんな事は絶対に有り得ないのに、
和希の名前が出てきただけで、すべて見透かされているようで、
啓太は無言で首を縦に振ることしか出来ない。
けれど次の瞬間、啓太は手首をグイッと引かれ、七条の腕の中にポスンと
抱きかかえられてしまった。
「わわ、七条さん!?」
啓太はその腕から逃れようとじたばたしてみたけれど、思いの外抱きしめる腕の力は強くて。
「・・・僕にしておきませんか?」
七条にぎゅっと抱きしめらているから、七条がどんな表情をしているのかわからない。
わかるのは七条の言葉に少しだけ寂しさが含まれていた事と、
ドキドキと聞こえる七条の鼓動。
「僕は伊藤くんを置いて何処かに行ったりしません。必ず大切にしますから、
彼ではなくて、僕にしませんか?」
「・・・七条さん・・・俺・・・」
それ以上は聞きたくないと思ったのか、七条は抱きしめていた腕の力を抜くと人差し指で、
啓太の唇にそっと触れる。
「すみません、また啓太くんを困らせてしまいましたね。」
そのまま伏せ目がちにクスッと笑われると、
七条の日頃見慣れない危うさに啓太の心臓がドキンと跳ねる。
「あ、あの・・」
「伊藤くん。」
「は、はい。」
「寂しいときは我慢してはダメですよ。」
そうゆう七条の目にはいつもと違う優しさが浮かんでいる気がした。
「寂しいなら、寂しいと。逢いたいなら、逢いたいと。我慢せずに言うべきです。」
「でも、和希、いつも忙しそうで。俺、邪魔になりたくない。和希の負担にはなりたくないんです。」
誰にも言わないで黙っていようと思っていた事を少しだけ吐き出したら、
なんだか今までせき止めていたものが外れて、
悲しくないのに目から溢れ出てくる涙が止められない。
「・・・伊藤くん、それを彼に伝えるべきだと僕は思います。大丈夫ですよ、彼は伊藤くんの事なら なんでも受け止めてくれますから。」
七条は、啓太の涙をちゅっと唇で拭いながら、ぽんぽんと落ち着かせるように背中を軽く叩いてくる。
「大丈夫?本当に?」
「大丈夫です。僕は嘘を付きませんよ。特に伊藤くんには、ね。」
意味有りげにニッコリ笑われて、七条の後ろに羽と尻尾が見えた気がしたけれど。
「俺、今から電話してみます。」
「そうですね、あちらはもう起きた頃でしょうから。」
ハンカチで涙を拭いて、ありがとうございました、と七条にお礼を言って、
会計室を出ようと扉を開けた時、七条に呼び止められた。
「伊藤くん、遠藤君に伝えて下さい。」
「え、はい?」
「『今度はありません。次はいただきます。』必ず遠藤君に伝えて下さい。」
「??それは?どうゆう?」
「秘密です。」
ニッコリ。
(あ、七条さんがこうやって笑う時は絶対教えてもらえないんだよな。)
「わかりました、伝えておきます。」
「お願いしますね。」
今また、羽と尻尾が見えた気がした啓太だった。


啓太は寮の自室に戻って、携帯電話を握り締めると、
2回深呼吸をして、覚悟を決めて和希の携帯電に電話をかける。
いつも、仕事の邪魔をしてはいけないと思って、絶対に電話しないけど。
今日あんな夢を見たせいか、それとも七条がせき止めていたものを外してくれたせいか、
早く和希の声が聞きたくて仕方ない。
プルルルプルルルと鳴る呼び出し音でさえもどかしい。
呼び出し音が止まって和希が出たと分かった時
和希が話す前に話しかけた。
「和希?」
『うん、どうしたの?啓太。』
啓太がずっと聞きたかった声。離れているのはたった1週間なのに。
「今、忙しい?電話してて大丈夫?」
『大丈夫だよ。もし大丈夫でなくても、啓太の為なら大丈夫にするよ。』
何だかそのセリフが和希らしくて、
「もう、和希ってば。」
『電話してくれて、うれしいよ。』
「・・・・(どうしよう)」
いざとなると何て言ったらいいのかわからない。
『啓太?』
「あのね、和希。いつ帰ってくる?」
『う〜んそうだな〜、あと2日もすれば帰れるんじゃないかな。』
でも、いつも和希に言ってもらってばかりだから、
今日こそは、電話でぐらいは啓太の正直な気持ちを言いたい。
「俺今凄く、和希に逢いたい。」
『啓太・・。』
さすがに電話口の和希も驚いているようだった。
「我侭だって分かってるけどっ。逢いたいっ。ごめん!こんな事言って。」
『我侭なんかじゃないよ、むしろすごくうれしいぐらい。』
和希の声は確かに凄くうれしそうで、啓太は少しほっとした。
「あのね、俺和希の邪魔になってない?俺は和希の負担じゃない?」
『・・・啓太が邪魔なんてそんな事あるわけないだろ。』
「和希はいつも俺の事考えてくれてて・・。なのに俺、和希に何にも出来ないから。」
啓太だって、和希の事が好きなのだから、与えられるばかりでは抵抗がある。
『啓太は、俺の傍に居てくれるだけで十分。あ、でももっと甘えてくれると
いいな、とは思うけどね。』
「和希っ!」
和希はたまに成瀬さんもびっくりするような事を言うので、
聞いてる啓太のが恥ずかしくなってくる。
『本当にうれしいよ。電話してくれた事も、会いたいって言ってくれた事も。
俺はどうしようもなく啓太の事が好きなんだから。』
「もう!和希っ。」
『好きだよ、啓太。』
電話越しにでも伝わってくる和希の想いに胸が熱くなる。
和希はきっと啓太の事ならどんな事でも受け止めてくれる、
そんな安心感さえその想いは感じさせてくれる。
「・・・和希」
『ん?』
「俺も、和希が好き。・・・だから、和希、帰ったらっ、その・・・し、て?」
啓太は自分の口から出た言葉に自分でびっくりした。
『・・え!け、啓太?い、今なんて??もう一回言ってっ!!』
「!!二回も言えない!も、もう電話切るからっ。おやすみっ!」
あまりの恥ずかしさに、まだ和希の声が聞こえていたが、無理やりピッと通話を切る。
「うわ〜俺っ何言った〜っ!!」
啓太は携帯をベットの上にポイッと投げ捨てて、そのまま自らもベットにボフッと倒れこむ。
「和希が帰って来た時どんな顔して逢えばいいんだよ〜っ。」
これもみんな、あの変な夢のせいだ!なんてじたばたしていたら、
啓太の脳裏をふと何かがよぎった。
「夢?」
(何か忘れてる?)
「あ〜っ、七条さんの伝言忘れてた〜。」
七条に必ず伝えて、と言われていたのに。
けれど啓太には、恥ずかしくてもう一度和希の携帯に電話する事なんて出来ない。
(どうしよう、でも急ぎとは言ってなかったから、和希が帰って来てからすぐ伝えればいいよね。)
「それにしても、『今度はありません。次はいただきます。』なんて和希、七条さんの物なにか取ったのかな?」
そこまで聞いて、こんな事を考えているのはもちろん啓太だけで。
まさしくそれは、七条からの宣戦布告。
電話の後、速攻で帰国した和希だって、もちろんそれをそう受け止めて。
「啓太、俺は2年間、海外いや出張そのものを辞める。いや、辞めさせる。」
そして和希は顔を強張らせながら、秘書や会社の人間が聞いたら真っ青になりそうな事を口走っていたりする。






かわいい!かわいいです!啓太たまりません!すみやかに犯します!(え)家の啓太にも爪のあかをせんじて飲ませねばっ!!
しもかわさんっ素敵なお話を有り難うございましたーっ!