柔らかい肉の感触に、やっとロックオンは我を取り戻した。
「ま、まてまてまてまて待てーーーー!」
刹那に掴まれていたフニャンとした息子を思考とともに自分の手に取り戻して、劣勢から逃れる様に刹那を突き飛ばしてベッドから転がり降りた。
いくらマウントポジションを取られているからと言って、ロックオンが刹那に負ける事は無い。
体格差と腕力の違いは、どんな体勢でもロックオンに劣勢を強いる事は無かった。
まあこれが、刹那がロックオンの首にいつも携帯しているサバイバルナイフを突きつけていたとすれば、また別の話になるのであろうが、裸体の刹那には装備は無かった。
「お前なに考えてんだ! なにいきなり俺の事強姦しようとしてんだよ!」
足首に絡んでいるパンツとズボンを前屈みで引き上げながら、急に変わった刹那の態度について糾弾する。
少しずり落ちてはいるが、それでも何とか大事な部分だけはしっかり布の中にしまい込んでベッドを振り返れば、おそらく誰にも荒らされた事の無い花園を恥じらう事も無く晒しつつ、突き飛ばされた体勢のまま目を丸くして転がっている刹那がいた。
その顔は、何が起こったのかわからないと雄弁に物語っていた。
そんな顔はこちらがしたいとロックオンは思ったが、取りあえず『女としてそれはどうだ』という格好を正そうと、刹那に手近にあったバスタオルを投げて下肢を覆う。
本当は教育の為に上半身も覆わせたかったが、それだけの大きさを持つ布は、刹那の体の下に敷かれた状態だった。
別にロックオン自身は見てもなんにも思わない、素晴らしく真っ平らな胸だったが、それでも初潮も迎えた女が男に晒していい物ではない。
混乱の状況から脱して、ロックオンは大きく一つため息をついて刹那に向かった。
「……取りあえず、服を着ろ。話はそれからだ」
今までに無い冷たいロックオンの命令口調と声に、刹那は表情を引き締めて体を起こした。
「根本を問うが、お前さんは俺の事が好きなのか?」
身なりを整えた刹那と向き合って、ロックオンはいきなりの刹那の行動の根本を訪ねた。
刹那がロックオンにした事は強姦未遂だが、今までそんな素振りも見せてこなかった刹那が何故そんな事をしたのかがロックオンは気になった。
恋をしていれば普通にある照れや恥じらいは、今まで刹那から感じ取れた事は無い。
それこそ毎日同じ布団に寝ていても何も無かったのだ。
そして、ロックオンが感じた疑問をそのまま表情に表す様に、刹那も不思議そうな顔をする。
「好き…とは、なんだ」
「なんだって…こっちが聞きてぇよ。なんでイキナリ俺とセックスしようとしたんだって聞いてんだよ。普通に考えれば、お前が俺の事好きなのかって事に行き着くだろ」
そんな素振りは見せなかったが、本当は同衾もソウイウ感情から続行を希望したとも考えられる。
ロックオンが刹那に対してしてきた事を、刹那が勘違いしても可笑しくはない状態だ。
仲間としての付き合いにしては、深すぎる関係。
生活の面倒を見られた事によって『優しくしてもらえた』と思い、更にそれが『恋』に発展してしまっても、刹那の年齢なら不思議は無い。
恋に恋するお年頃だ。
それでもロックオンにはそんなつもりは無かったし、実際に刹那の裸を目の前にしても、自慢の息子はエレクトしなかった。
それは多分に、一般的に言われていて、尚かつロックオンが経験してきた『セックス』というモノの雰囲気を持ち合わせていなかったのも原因かもしれないのだが。
どちらにしても刹那とソウイウ関係になる事は、この時点ではロックオンには考えもつかない事だった。
何度も繰り返すが、ロックオンにはロリコン趣味は無く、その上、今の所特定の相手を作るつもりも無かった。
いや、『今の所』という表現は間違いで。
CBに参加する事を決めたとき、もう特定の相手を持つ事は止めようと決めていたのだ。
前線に送り込まれる事がわかり切っていて、それは即ち、いつ死ぬかわからないという事で。
そんな恋人は相手にとって不幸を招くだけだと、誰を愛してしまったとしても、絶対に付き合う事はしないとロックオンは誓っていた。
だから、刹那の返答如何によってはこのまま仲間でいる事への説得が必要だと、ロックオンは会話をシュミレートした。
刹那の恋を諦めさせ、尚かつ今まで以上に親密な仲間になる為に。
だが、刹那はロックオンの想像を裏切っていた。
刹那はロックオンが経験してきた世俗とはかけ離れた人物だった。
ロックオンの言葉を頭の中で巡らす様に視線を床に逸らせた後、刹那は再びロックオンの瞳を見て告げた。
それは、今までロックオンが聞いた事の無い、ある意味『愛』の告白だった。
「お前の言っている『好き』というのは、俺にはわからない。ただ単に、俺はお前の遺伝子を受け継ぐ子供を産もうとしているだけだ」
「だから、それは俺の事が好きだってことだろ?」
「俺の感情などどうでもいいだろう。これはミッションなのだから」
「何のミッションだよ。俺の事、誰が強姦しろって言った?」
「何故『強姦』になる? これは組織の意思なのだろう?」
「はぁ!?」
刹那よりも前から組織に属しているロックオンは、あまりの事に夜中にも関わらず、素っ頓狂な声を上げた。
「俺がお前と相部屋になったのは、ソウイウ意味だと解釈している。俺たちは、俺たちが死ぬ前に組織の意思を継ぐ者を産み育てなければならない。女の俺がマイスターに選ばれたのは、ソウイウ意味も含めての事なのだろう?」
CBは、そんな怪しげな組織ではない。
いや、怪しいには怪しいが、結婚相手を決める様な、決められた相手の子孫を残す事を強要する様な、新興宗教の様な組織ではない。
その上子供を洗脳するなどあり得ない。
それこそ宗教テロの組織と変わらないではないか。
刹那の表面上に捕われて、基本的な指導が出来ていなかった事実をロックオンは突きつけられて、額を抑えた。
刹那の外見上、そういう環境に過去に置かれていたとしても不思議ではない。
スメラギの言っていた『精神問題』はこういう所にもあったかと、ため息をついた。
「……あのなぁ、ここはソウイウ組織じゃない。意思を継ぐか継がないかは個人が決める所だし、恋愛は規制されていないが、子供を作るのだって個人の自由だ。だから、お前さんが無理矢理俺の子を産もうなんて考えなくてもいい」
取りあえず簡潔に説明をして、何故刹那と自分が相部屋になったのかを説明しようとしたロックオンの言葉は、刹那に遮られた。
「別に、無理矢理なんて思っていない」
「………あ?」
「逆に、ここはなんと素晴らしい組織だと感嘆したくらいだ」
「…………えっと?」
「そして俺は、マイスターに選ばれた上に、お前の遺伝子を貰える権利を与えてもらえた事に誇りに思っている」
「……………はぁ?」
いつになく饒舌な刹那を、ロックオンは呆然と眺めた。
淡々と話を進めている様に見えているが、刹那の声には明らかに喜色が混じっていた。
それがわかるくらいには、ロックオンは刹那になれていた。
「射撃、近接戦闘に優れた上に、お前がヴェーダに提出している論文も見せてもらった。まだ俺には理解出来ない部分も多かったが、あんな事を考えつくなど、頭もいい。それになんと言っても、お前の外見要素は素晴らしいと思う。肌は抜ける様に白く、瞳の色も美しい。くせ毛はいただけないが、髪質は柔らかく触り心地が良い。この遺伝子を受け継げるなら、きっと子供は愛らしく、素晴らしく体術も頭も出来る人間になるだろう。組織の役に立つのは確実だ。そんな人間を作り出す事の栄誉を与えられたなんて、まるで夢のようだ。そしてお前の様な人間を抱える事の出来るこの組織は、本当に素晴らしい場所だと思う」
淡々と、そして朗々とロックオンの素晴らしい場所を連ねる刹那の表情は、端から見れば何の変化も見出せない物だったが、ロックオンから見れば刹那が興奮しているのがわかった。
それがわかったが故に、ロックオンは大きくため息をつく。
こんな条件のみで子供を作る事を考えられる様な精神状態など、とてもではないが外の人と交わる事の多い実行部隊には適さない。
一通り聞いただけでは、刹那の言葉は頭の悪い女の告白とも取れるが、根はそんなに浅い所ではないと、1年刹那の面倒を見てきたロックオンには理解出来てしまった。
スメラギへの刹那のマイスター除名の提言も考えたが、確実にこの思考は刹那を推薦したヴェーダは把握済みなのだろうと考え、いく通りかの刹那の思考を数分でシュミレートし直し、ロックオンは重い口を開く。
「……あのな。繰り返すが、この組織にお前さんみたいな考えは必要ない。お前さんの仕事は子供を産む事じゃなく、単独行動を伴う実戦を勝ち抜く事だ。それには戦術予報士の言葉を正確に捉えられるだけの安定した精神状態と、健全な肉体が必要だ。俺はお前さんにそういう仲間になって欲しくて共同生活をしてる。組織の意向もおそらく同じだ。だから、その因習じみた考え方は捨てろ。結婚したいならしたいで別に止めはしない。でも、普通に恋愛をしてからにしろ。子供なんて、その上の話だ。恋をする相手が決められてるなんて馬鹿げた事も無いから、お前さんが好みの男でもちゃんと見つけな」
一般的な事を一通り話してみて、更にロックオンは刹那の様子を探る。
これで理解されなければ、また他の方法を考えなければならないからだ。
ロックオンが考えても、常識以外を考えれば、やはり刹那は離しがたいマイスターだった。
ロックオンの説明を一頻り大人しく聞いていた刹那は、頭の中で言葉を噛み砕く様に視線を下に向けたまま、暫し口を閉ざした。
その表情は苦悶に満ちていて、ロックオンは己の説明が刹那に届かなかったのかと推察する。
もう一度、刹那の考え方の偏りについて説明しようとロックオンは口を開きかけたが、それは刹那の言葉に遮られた。
そして、ここでも刹那はロックオンの考えを凌駕した言葉を口にした。
「……恋、とは…どういう物のことをいうんだ?」
「…はぁ?」
そんな一般知識まで無かったかと思うと、果たして自分は一年もの間何をしていたのかと、ロックオンは我が身を振り返ってしまう。
ロックオンの困惑を見て取った刹那は、付け足す様に、いかにも『学術』的な恋というモノを語り出す。
「俺の知識では『恋』とは生物学的に繁殖を促す感情だと認識している。各生物によってその基準はあって無い様な物だが、それでも俺たち人間の繁殖条件は、相手を『雄』と見られる事で、その遺伝子を欲する事だと思った。俺はきちんとお前を『雄』であると認識出来るし、お前の遺伝子を欲しいと思った。さっきお前が言った『好き』という言葉はどこに該当するのかはわからないが、お前を『雄』と見られる事で考えられるのは、俺はお前に生物学的に『恋』をしていると思っている。だからお前との繁殖行動は問題ない。組織が考えたプランに沿っていると思っているし、何故お前が反抗するのかわからない」
非常に動物的な説明をされて、ロックオンの肩は更に落ちる。
どこで指導を間違えていたのかと。
いや、そもそも一年『男』を育ててしまったのだから、刹那に『女』としての感覚が備わる事は無いのだが、それでも人間には『思春期』という物があって、そこで自分の性別にあった考え方が身に付くモノだ。
だが、刹那にはそれが無かったのだとロックオンは考えた。
根本を考えると、やはり異性のロックオンとの同室が問題なのではないかと思ったのだが、散々却下されている案を蒸し返しても仕方が無い。
この同室を決めた戦術予報士は、刹那を一人前のマイスターにする事を考えて、この作戦に出たのだ。
作戦自体は巧くいった。
だが、『女』を育てる事としては失敗だった。
ただそれだけだ。
マイスターに男も女も関係ないのだが、それでも一人の人間として、刹那が自分に子供を育める器官を兼ね備えていると自覚しているなら、仲間として、そして兄貴分として、マイスターとは関係のない場所での、刹那に対して『女』としての指導の必要性をロックオンは実感した。
おそらくそれさえ備えられれば、刹那は一人前と見なされて独り立ち出来るだろう。
女としての自覚を持つ事、即ち社会性が身に付くという事なのだろうから。
ロックオンは、寝る為に手袋を外していた所為で、珍しく素の指先で、自らの髪の毛を掻きむしった。
その仕草が終わると同時に口を開く。
「……あのな。お前の言う『動物的な恋愛』って言うのも合わせて言えば、俺とお前は夫婦になれない」
「何故だ?」
当たり前の様な質問に、少し躊躇した後、ロックオンはストレートに言った。
「俺はお前を『女』として認識出来ないから」
そう言いながら、ロックオン自身も『きっつー』と自覚していた。
あまりにも年頃の女の子に対しての配慮の足りない言葉。
それでも、おそらく刹那の性格上、ここまで言わなければ引かないと思ったのだ。
だがそれでも刹那は引かなかった。
「なら、俺の膣を見せてやろう。そうすれば俺が女だと解るだろう?」
あまりの言葉に、ロックオンは開いた口が塞がらない。
どこの世界に『女として見れない』と言った男に対して『膣を見せてやる』という女が存在するというのか。
……いや、ここにいた。
二の句が継げないロックオンに、刹那は追い討ちをかける様に再び自らの衣服に手をかける。
「まてまて! ちがーう!」
慌てて刹那の手を止めさせて、大きくため息をつきながら、決定的な事を刹那に告げた。
「……だからっ…お前見ても勃たねぇから、セックスなんて出来ねぇって言ってるんだよ!」
これはもう、配慮などかまっていられないと実質的な事を口にする。
そうでもしなければ、刹那は固執した考えに捕われ続け、ロックオンとの結婚という事柄を諦めはしないだろうと思ったのだ。
ロックオンの雄叫びにも似た言葉に、刹那はふと不思議そうな顔をした。
「セックスが出来ないとは、どういう事だ? お前にはきちんと陰茎があるだろう。それを俺の膣に挿入する事が、そんなに難しい事か?」
先程目にしたロックオンの息子の場所に視線を固定しながら、殊更不思議そうに刹那は言った。
それは即ち………。
「………あの、刹那さん……せっくすって、どうやるか知ってる?」
恐る恐るロックオンが訪ねると、刹那は自信満々に応えた。
「男性の陰茎を、女性の膣に挿入し、ソコで男性が射精をする。それくらいは俺だって知っている」
刹那の言葉に、ロックオンは思いっきり肩を落とした。
まるで、解っていない。
おそらく刹那の頭の中にある男性器とその構造は、生物の教科書に載っている泌尿器科の図解の断面図であると、ロックオンは確信出来た。
そしてセックスは、おしべとめしべの受粉状態だろう。
もう、何の因果で最年長マイスターになってしまったのかとか、どうしてこんなに世間知らずに育ったのかとか、色々な事が頭を巡るが、一歩間違えば変態としか取られない言葉を、教育の為に口にする。
「違うの! 男と女がセックスするには、男は勃起しなきゃ挿入出来ないし、女は濡れないと凄い痛いんだよ! ただ挿入するってだけじゃないんだ! ちなみにセックスは、女の体内で男は動くの! 擦んないと射精出来ないんだよ!」
ここはジュニア・ハイの教室かと、思わず頭を抱えてしまう。
それでもここで説明しなければ、余計説明し辛くなる事をロックオンは理解していた。
何事もタイミングだ。
はずしゃしねぇと、多少ずれた所で自らの変態発言を正当化してみる。
だがそんなロックオンの葛藤も、刹那には関係がなかった。
ロックオンの説明を受けて、更にロックオンの股間に視線を固定しつつ、考え込む。
暫く黙った刹那に、やっと諦めてくれたかとロックオンが安堵しかけた所で、再び刹那は爆弾発言をした。
「……という事は、ミッションが遂行出来ないのはお前の責任という事か?」
「はいぃ?」
「お前は勃起出来ないのだろう? その所為でセックスが出来ないという事なら、お前の責任だ。キチンと勃起出来る様になってくれ。ミッションに支障が出る」
まるでイ●ポ扱いされて、ロックオンの男としてのプライドが傷つけられる。
自慢ではないが、ロックオンの下で昇天した女の数は両手の指の数より多いのだ。
大人げなくカチーンときてしまったロックオンは、刹那を押し倒した。
そして無反応な息子を刹那の太腿に押し付ける。
「……この状態で無反応なのは、お前さんに色気が足りないからだっ。俺が普通に同衾で寝れねぇ位お前さんが色っぽい女だったら、俺には何の問題も無いんだよ。つまりは、女としての修行の足りないお前の所為だっ」
「自分が勃起出来ない事を俺の所為にするな! 俺は女だ!」
「はーん? どこが? 胸はねぇし、ケツもガリガリ。俺とお前の違いなんて、チンコがあるかないか位しかねぇんじゃねぇの?」
「だから俺の膣を見せてやると言っているだろう!」
「お前のマ●コなんか見ても、勃ちゃしねえって言ってんだろ! ●ンコありゃ女だって認識出来るんなら、この世に処女は存在しねぇっつーの!」
売り言葉に買い言葉で、二人は自分たちがどれだけ下品な会話をしているか気付いていない。
そして、その声の大きさも気付いていなかった。
二人の声の大きさにも負けないくらいの大きな音で、夜中にも関わらず思いっきり二人の部屋のドアが叩かれた。
……いや、夜中だったからその大きさになったのだろう。
「夜中に下品な事を騒ぐな! 眠れないだろう!」
怒鳴り込んで来たのは、隣の部屋のマイスター、ティエリア・アーデだった。
そしてその後ろにひっそりと、ティエリアと同室のアレルヤの姿もあった。
「夜中とかじゃなくて…あんまり大きな声で話す事じゃないと思うよ? 僕たちの部屋にも響き渡ってたから、他の部屋にも聞こえてるかもしれないし、もう少し小さな声で話した方がいいんじゃないかな…」
うっすらと頬を染めながら提言し、ちょいちょいと刹那に向かって手を振る。
その手の動きに導かれて、刹那はアレルヤの前まで歩み出た。
「まあ、刹那もお年頃だからね。…これ、僕のおすすめ。ロックオンと好みが合わないんだったら、見てみなよ。抜けると思うよ」
「……『抜ける』?」
ポトンと手の平に落とされたデータチップらしきモノを眺めて、刹那は首を傾げた。
それを見てロックオンは、これまでとは違った方向で混乱して慌てる。
「わーわーわー! アレルヤ! それ駄目だ! 刹那は女の子なんだー!」
叫んでからはたと思い返したが、取りあえず刹那の性別についての規制が無かった事に、ロックオンは安堵する。
だがその言葉を聞いた二人は、あまりの事にロックオンを見つめ、そしてその視線を刹那に移した。
浮き出た上腕筋。
きつい視線。
見事なまでに凹凸の無いボディライン。
そして何より、いつもの訓練の様子を思い浮かべて、隣の部屋の二人はロックオンを可哀想な人を見る様な目で見つめた。
「な、なんだよ、お前らその目は。ホントだって。スメラギさんにも本人にも確認してるし、ちゃんと股間だって見たんだよっ!」
自身を弁明する為に、思わず余計な一言を付け足してしまったロックオンだった。
その言葉にティエリアが食いつき、アレルヤは首まで赤く染めた。
「見たって…なんですか! そんなふしだらな…! 隣室でそんな事が繰り広げられていたなんて、気分が悪いです!」
「ふ、二人って、ソウイウ仲だったんだ…。き、気が付かなくてゴメンね」
「わー! 違う! アレルヤ違うから! ティエリアも勘違いするな!」
刹那とはただの仲間だと、自分の好みとはかけ離れているとロックオンは切々と訴えたが、それが逆効果になった事は言うまでもない。
「仲間と遊びでソウイウ関係になったんですか! 見損ないましたロックオン・ストラトス!」
「だーかーらー! ティエリア違うって! …こらアレルヤ! ソコでひっそりと軽蔑の視線を送るな!」
「だって、裸を見たんでしょう? 言い訳するなんて、男らしくないと思いますよ」
ロックオンが何を言っても、状況が悪すぎるのだ。
二人が同衾していた事は回りにも知られていたし、実際に何事も無かったが、ロックオンは刹那の体を見てしまった。
そして、極めつけ。
「二人とも、問題ない。俺は立派にロックオンの子供を産んでみせる」
「こら刹那ー! おま、何言ってるんだ!?」
ロックオンが何を叫んでも、こういう場合は女の方が立場が強い。
それこそ、『心象』で全てが決まってしまうのだ。
刹那にむかってティエリアは、それまでの調子を抑えて口を開く。
「…刹那・F・セイエイ。貴様はそれで納得しているというのか」
「ああ、問題ない。これが俺に与えられたミッションだと思っている。子を産み育む事は、全人類の女に平等に与えられるミッションだ」
「なら、なるべく武力介入の前に、妊娠出産は終わらせておけ。貴様はガンダムマイスターなのだから」
「解っている」
「お、おい! ティエリアも待て!」
ロックオンが一人慌てるのを、他の3人は気にもとめない。
そして何事も無かったかの様にティエリアがきびすを返し、アレルヤはロックオンの肩に手を置いて、去り際に一言置いていった。
「……責任は、取らないといけないと思いますよ」
何とも言えない微妙な視線と共に贈られた言葉に、ロックオンはどう返していいのか解らなかった。
そして、部屋には静寂が訪れる。
二人を見送った刹那がロックオンの手を取り、再びベッドに導いても、ロックオンに抵抗する気力は残されていなかった。
だが、当然セックスが出来る訳も無く。
再び下半身を露にされても、ロックオンの自慢の息子も気力を奪われていた。
「………お前は、どうしたら勃起するんだ?」
項垂れたロックオンの息子を眺めつつ、刹那は思案顔でロックオンに問いかける。
もう、付き合いがどうとか、刹那が好み以外だとか、そんなミッションは存在しないとかを説明する気にもなれず、ロックオンはげんなりと口を開いた。
「……お前が、胸がDカップになって、ヤマトナデシコ真っ青な貞淑な女にでもなれば、勃起するかもな」
どこかで聞いた事のある伝説の女のタイプを口にして、もう一度のろのろとパンツとズボンを引き上げる。
「了解だ」
刹那が神妙に頷いたのを聞いて、騒動の終止符を打つ為に、ロックオンは安息を求めた。
「………寝るぞ」
「解った」
いつもの通りに二人で服を着て布団に入り、ロックオンは今までの悪夢を忘れる様に目を瞑った。
内容がシモすぎてホントにすみません…。伏せ字が多くてすみません…。兄貴が不憫すぎてすみません…。
でもこれからが兄貴の夢達成に向けての本番です!
ちなみに、刹那さんは一応勃起の構造は知っています。ただ、「何の役に立つんだろう?」って思っていた事が今回で解っただけです。清純さん…!(←え)
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