「も、だめぇ!」
「なんで、だよッ! こんなに、絞めてるだろッ!」
喫煙の解禁も合わせてなのか、この日のライルの行為はいつも異常にしつこかった。
初めて体をこの艦で合わせて以来、略毎晩抱き合っているが、重力の感じられる場所に下りてからのライルは、慣れた感覚の所為か、以前よりも必要以上にソランを求めた。
そして更に今日は、何度ソランの中に注ぎ込んでも終わらない。
以前、一般人として付き合っていた時からは想像のつかない回数に、そして快楽に、ソランは悲鳴と涙を零し続けた。
理由は当然、体力の違いだ。
会社員をしていた頃も、他のデスクワークの社員よりも、営業という職種ゆえに歩く事が多かったが、それでもマイスターとは比べ物にならない。
身体作りをし始めて半年近くが経ち、真面目にトレーニングに励んでいたライルの身体能力は、兄の生前を上回っていたのだ。
更に、効率を考えたメニューを、一カ月おきに更新させていて、マイスターとして誰にも何も言わせないだけのものを維持し、更に精進している。
ソランの体を抱きしめたライルから、興奮で香りが強くなったフレグランスが香り、ソランはその香りに酔うように、辛いと思っていても抵抗できなかった。
ライルは止める気が無いのか、そんなソランを笑いながら蹂躙する。
「あーッ、もう、マジで後10回くらいイケそうッ!」
「いやッ! いやぁ! ゆる、してぇ!」
ソランの悲鳴に、ライルは更に興奮して、再びソランの胎内の自身の質量を増した。
その事にソランはまた快感を拾い、泣き叫ぶ。
悪循環だ。
興奮したライルが腰の動き加速させて、終焉へと向かう。
「あー! あ、あッ! らい、も、またッ!」
「は……ッ、なんだかんだ、言っても、お前も、楽しんでる、じゃないかッ」
長い性行為に、ソランのソコは敏感になり、必要以上に快楽を拾う。
ライルの背中に回していた手に力が篭り、汗に滑る皮膚に留めようと、爪を立てた。
小さな痛みに、ライルは更に興奮して、ベッドが大きく軋む音を立てる。
元々シングルベッドなのだ。
二人分の加重に耐えられるようには設計されておらず、二人の営みにベッドも悲鳴を上げていた。
「……ッ! イクッ! 出すぜッ!」
絶頂間際の堅い男根で女の胎内を犯せば、ソランは体を強張らせて、同じタイミングで絶頂を迎える。
「あ、あッ、あーッ!」
ライルの背中に、今日何本目かの傷をつけて、ソランは果てた。
その収縮に、ライルも自身を解放する。
ドクッと大きくソランの中で分身を痙攣させて、遺伝子を注ぎ込んだ。
それでも子供は出来ない事は承知の上だ。
ライルはソランの生理周期を端末に記録していて、更に女性の性は、それなりに知識がある。
本気の付き合いしかしてこなかった故に、彼女を傷つける可能性を常に考えていた。
今までは避妊具で防御していたが、今は二人揃って生身で愛し合うことを求めてしまう。
故に、月ごとに行われているソランの身体検査のデータも、キチンと目を通していた。
今は問題の無い時期で、その事も合わせてライルは止められない。
もしコレが危険日であれば、また愛し方は変わったのだが、時期も合ってしまった今はもう、止める事などできなかった。
ソランの絶頂を、彼女の胎内の痙攣で感じて、更なる欲望が頭を擡げる。
荒い息をつきながら唇を合わせて、回復しつつある自身をソランに体で伝えた。
「やっぱ、俺にはニコチン必要。マジでいくらでもいける」
「あ……ば、か……ッ。も、禁煙、しろッ」
この先、この状況が続いてしまっては、活動に問題が出るのは必至だ。
ソランは力の入らない手で、ライルの肩を叩いた。
それでもライルの興奮は収まらず、執拗にソランの蜜壷を往復する。
本気の行為ではない、緩やかな動きだったが、それがいつ本気になるのかわからないソランは、その動きを制するように体を捻る。
拒絶はライルの興奮を煽るだけなのだが、それを理解していても、だからと言って黙って受け入れていれば終わるわけでもない。
もう限界だと訴えるが、ライルの興奮は収まらなかった。
「ずっと我慢させてたのはお前だろ。付き合えよ」
煙草の吸える環境を教えなかった事を根に持っているライルに、ソランは溜息を零す。
所詮、喫煙の習慣の無いソランには、わからない辛さだった。
それでもイアンに言われて、少しは考えたのだが、この艦にライルが合流し、交わしたキスは、ソランには大変に快適な愛情だったのだ。
恨めしげにライルを見つめれば、ライルもまた同じような視線でソランを見つめる。
こう着状態が続き、結局折れたのはソランだった。
「……悪かった。これからは、邪魔しない」
だからもう、と続けようとしたソランの言葉は、ライルの素晴らしい笑みに遮られた。
そして再び始まる律動。
「ちょッ、あッ、まてッ!」
「ん? 邪魔しないんだろ?」
「こっちじゃ、ない……ッ! あ、あん!」
己の言葉を都合の言いように捉えるライルを抑えようと、ソランは必至に手を伸ばした。
今は第二種戦闘待機の状態で、思う存分愛し合っていい時ではない。
そう訴えようとした時、ソランを助けるように、二人の端末が一斉に鳴った。
ライルは目を瞬かせて、それでもソランから己を抜かずに端末を手に取る。
ボイスオンリーにして回線を開けば、緊急ミーティングの呼び出しだった。
「え……だって今、休息時間だろ」
ライルの呟きに、ソランは内容を理解して、安堵の溜息をつきながら、自分たちの立場を訴える。
「4人しかいないマイスターに、まともな休みなど無い。行くぞ」
つい先程まで艶やかな声で鳴いていた彼女は、既に頭が仕事モードに切り替わっていると表している口調で、ライルの分身をそっと自分の胎内から引き抜いた。
「いやでも、コレどうすんだよ」
完全に復活してしまっている己を指差してライルが訴えれば、ソランは冷たい視線をライルに向ける。
「自分で処理して来い。俺は先に行っている」
セックスをしていてミーティングに出ないなど、刹那としてはありえない話だ。
散々啼かされて、悲鳴を上げている体にムチを打って、震える手で制服を身に纏った。
本音はシャワーを浴びたかったが、緊急と言われては仕方がない。
慌てているライルを置いて、ソランは先に部屋を出て、刹那の顔に戻った。
「遅いぞ、ロックオン」
「悪い」
ライルがブリーフィングルームに姿を現したのは、刹那から遅れること5分だった。
それでもライル以外のマイスターは全て揃っていて、改めてこの組織の人間の優秀さを見る。
素直に謝れば、厳しいティエリアの言葉の後に、アレルヤが「緊急は馴れないと慌てるよね」とフォローを入れてくれた。
なんとなく配役がわかってきて、そんなアレルヤにもライルは礼を告げる。
全員が揃ったところで、ティエリアが口を開いた。
「そろそろアロウズが陣を牽き終える頃だ。そして僕が予測するポイントまで、後20分で到着する。マイスターはスタンバイしておいた方がいいだろう」
足元のモニターに海底地図と地上の地図を表示させて、更に自分たちが相手から消息を絶った地点を示し、動きの予測を伝える。
それだけでも、ライルから見れば、立派な戦術予報だ。
コレの更に上を行くのだから、スメラギの頭脳は計り知れない。
神妙に頷いて、パイロットスーツに着替えるために、ロッカールームに移動しようとした。
だがその時、背後から小声でティエリアに声をかけられる。
「……お前たち二人は、さっさとシャワーを浴びて来い。5分で終わらせろ」
振り返れば、ティエリアはライルと共に、前を歩く刹那も視線で示した。
関係がばれているのだから、予測されても仕方がない。
「了解。悪かった」
「そう思うのなら、少しは慎め。今はいつ敵襲に合うかわからないのだから」
「以後、気をつけます」
緊張感に欠けていた自分を謝罪すれば、ティエリアは小さく溜息を零した。
「まったく……。変なところだけは、そっくりだな。君たち兄弟は」
兄の話を持ち出されて、更に同じ行動をしたのだろう兄を思って、ライルは引き攣った笑みを漏らした。
「あー、そう。じゃあ血筋だ」
「遺伝子かもしれないぞ。……だがまあ、現場の空気に慣れていない君の方が、まだマシか」
「ああ、そうか。あの人は普通に訓練受けてたんだもんな」
なのに同じ行動とはと、ライルは兄に呆れてしまう。
緊張感が無いのは昔からで、何事も自分の思うままに進めていた彼を思い出して、肩をすくめてしまう。
比較されるのはあまりいい気がしないが、それでも今の所、いつでもライルの方が賞賛されているので、肩をすくめて流してしまえる。
それに彼と自分を比較するのは、この場の人間に限った事ではない。
双子と言うのは、そういう宿命なのだ。
同じ顔で、同じ声。
だからこそ、他の人よりも酷く比較される。
長年諦めていた事だったが、それでも溜息が出る。
ライルの溜息を聞き取ったのか、ティエリアはライルの肩を軽く叩いて、一言残して去っていった。
「僕は二人とも嫌いではない。それに兄弟というものを初めて見る事が出来たから、勝手に楽しんで悪い」
「……そういう事ね」
確かにこんな秘密結社では、滅多に兄弟で同じ部署に配属など無いだろう。
しかも双子など、普通でも珍しがられる。
更にココは最前線だ。
自分が多少の楽しみを提供しているかと思えれば、再びライルは溜息を零して、それでも顔は笑う事が出来た。
艦内が警戒態勢に入り、ライルはいまだに馴れないパイロットスーツを先に着込んだ。
マイスター各員に与えられたのは、戦闘待機命令と、更に現在艦内に身柄を確保している一般人への監視と、万が一の時の身柄の確保だった。
ライルは己と一応面識のある沙慈を確保しようかと提言したが、それには既にイアンが動いていた。
沙慈の経歴を聞いて、嬉々としてイアンが呼び出したのだと説明を受けて、思わずライルは沙慈に同情して、心の中で十字架を切る。
ご愁傷様、と。
ココでの仕事は半端なくキツイ。
借り出された宇宙工二種免所持者に、心底同情した。
マリナ姫は当然刹那が担当しているので、ライルは端末を片手に、カタロンへの連絡事項を纏めていた。
ロッカールームにはライルしかおらず、堂々とCBの配給ではない端末を開いて操作していた。
その体勢で数時間が経過した時、ティエリアの予測は当たった。
艦内に警報が鳴り響き、敵機の存在を放送で流す。
トレミーの進路もティエリアの予測も予め情報を流しておいたので、おそらくカタロンも動いているだろうと、ライルは端末をしまって、ヘルメットを片手にロッカールームを出た。
だがスタンバイルームには、誰も居なかった。
鳴り響いている警報に首をかしげて、誰も居ないスタンバイルームでヘルメットをかぶる。
やっと馴れてきたヘルメット内の髪の毛の扱いを終えて、足元のハロに問いかけた。
「なあ、みんなは何で来ないんだ?」
ずっと鳴り続けている警報を指して、組織の先輩であるAIロボットに問えば、ハロは「シラナイ! シラナイ!」と繰り返す。
それでもその答えは直に得られた。
警報の合間に、艦に衝撃が走り、目の前の格納庫に穴が開く。
吹き込んでくる海水に、慌ててスタンバイルームを出れば、予め準備していなかったマイスター達は、ライルと同じ格好で各々の自機に走っていた。
(うわぁ……)
並みの軍隊ではありえない動きに、ライルもケルディムに向かってハロを抱えて走りながら、感動してしまう。
ライルがロッカールームを出てスタンバイルームに入った時間は、5分少々だ。
その時間で行動できる、行き届いた訓練に、これでは自分は何も出来ないのと同じだと、ライルはケルディムを起動させながら肩をすくめた。
一般人の確保の時、当たり前のようにメンバーから外されていた理由も悟る。
まだ、認められていないのだ。
一人前であると。
いつになったら認められるだけの技量を身に付けられるのかと、段々海水に浸っていくモニターを眺めながら思ってしまった。
機体の中で指示を待っていれば、オペレーターのフェルトの指示の後ろに、スメラギの声が響いている。
これは……と、ライルは口端をあげた。
そして出される正確な指示に、果たして敵は指示の予測どおりに動いてくれた。
海中での役割を終えた後、他の機体を追って海上に出る間、笑ってしまった。
直接心を動かしたのは刹那に違いが無い。
それでも昔の面子が揃って、やっとスメラギの心は道を決められたのだ。
ここにもし兄が居れば、もっと簡単だったのだろう。
だがこれも運命なのだと、そう思えた。
兄の時よりも、戦術の精度は上がるだろう。
おそらくスメラギの戦術に従っていれば、兄の二の舞は踏まない。
約束を守れる。
育児機関で約束したとおり、パイロットスーツの下に身につけている時計を感じて、ライルは目の前の目標を見据えた。
戦闘は、スメラギの戦術であっけない勝利を得た。
更にライルが手配しておいた、カタロンが間に合った。
CBの動きに合わせて姿を見せつけ、CBの勝利の半分を手に入れる。
世界はそう受け取るだろう。
ライルの目論みはソコだった。
それでも合流後、そこに居るはずの無いカタロンの仲間に首をかしげ、更にマリナを呼び出した彼女に疑問を持てば、それにはあっけない回答が、ライルを勧誘したクラウス・グラードから得られた。
彼女、シーリン・バフティヤールの出身がアザディスタンであり、王宮に勤めていたと。
マリナの側近であったと言われて、納得すると共に、彼女に異常に詳しい彼に笑いが零れる。
確かに、美人である。
同郷のクラウスに、更に同郷の想い人が居る事に、更に更に自分たち兄弟を思って、アイルランドの男は、アザディスタンの女に落ちる運命なのかと、笑ってしまった。
その後、合流を果たせたカタロンは、当然CBに共闘を申し出る会談を持ちかける。
CBの戦術予報士としての仕事を請け負ったスメラギが、カタロンの会談に応じる指示を出したところを見届けて、ライルは更なる自分の仕事を遂行した。
近隣の基地に案内して、更に交友を進めさせる。
ライルの仕事は第一段階は成功したのだ。
カタロンが望む、CBとのラインを確保したのだ。
まだ新参者のライルが会談に入る事は当然無く、カタロンではお目にかかれない最新兵器をカタロンの構成員に見せ、その場を宥めていた。
会談終了後、当然のように暗号通信がライルに届く。
クラウスの部屋を指定されて訪れてみれば、会談の内容の報告だった。
望んだ答えには及ばないが、それでも手がかりは掴んだと。
当たり前だと心の中で答えながら、それでも今後のライルの活動の指示が渡された。
簡単に文面を改めてみれば、今までと大して変わりの無い、行動報告のみだった。
もっと突っ込んだ情報も得られるのに、何故、とライルがクラウスを見つめれば、彼はライルと同じ色素の薄い瞳でウィンクをする。
「どうせ我々が入手できたところで、活用できる技術力など無いだろう? 戦術報告と行動報告のみで十分だ」
おどけた彼の雰囲気に、それがクラウスの真の言葉ではないと悟り、更にライルがカタロンに属した本当の理由を知る彼はライルを助けてくれているのだと悟り、ライルは小さく笑った。
そして自分が見た彼と言う人物は間違いでは無かったと、安心してしまった。
指示を受けてケルディムに戻れば、何故かケルディムの足元にティエリアの姿があった。
「なんだよ、どうしたんだ?」
彼は刹那とスメラギと小型艇でここまで来ている。故に帰りも同じだと思っていたライルは、傾いた視界のまま半ば無理やりティエリアにケルディムに連れ込まれる形になった。
狭いコクピットの中で行動を問えば、ティエリアは溜息をついて仔細を伝えてくれる。
その内容たるや、驚く事だった。
「マリナ・イスマイールが、このままアザディスタンに戻るそうだ。刹那が小型艇で送る。だから僕がケルディムで、スメラギはアリオスで帰投することになった」
「はいぃ? なんで? カタロンで保護してもらえないのか?」
「本人の希望だ。……まったく、あの国の女は信念を曲げる事を知らないのか」
刹那の事も合わせて溜息をつくティエリアに、ライルも口をあけて呆けてしまう。
無茶だ。
誰もがそう思う。
しかも今回の一件で、CBの進路がばれていると思われる中東に赴くなど、死にに行くようなものだ。
「刹那は止めなかったのかよ」
友人である彼女の安否を不安に思わないのかと、ライルは眉を寄せる。
「止めるような女なら、今この場に居ないだろう」
自分のやるべきことを最優先するタイプだからこそ、子供を預け、男を捨て、更に最前線に送り出すような真似ができるのだと、ティエリアは更に溜息をついた。
ライルも合わせて溜息をついてしまう。
「理解があることで。……まぁ、その辺は同郷の人に任せるしかないのかね」
「多分な。僕達が何を言っても、意味が無いだろう」
会話を終わらせるように、ティエリアはライルに発進を促す。
ケルディムを起動させたところでスメラギから通信が入り、行動を告げられた。
バーストモードです……すみませn(:D)| ̄|_
テンション駄々上がりで猿です。せっさん絶賛後悔中ww
コロニーのホテルでも吸ってましたが、その時は子供が側にいたので、ひっそりと愛の営みで済んでいたので、禁煙がこれほど精神的に堪える物だとせっさんは気が付きませんでしたww
ま、吸わない人には解らない辛さと言うことです。
そんで体力と精力ですが、一般社会人だった頃も、ライルは兄さんくらいは普通に持ってました。なので増強合宿で大変な事になってます。超兵並ですww
だからどうしてそうなったのかといえば、やっぱり「なんなの、このライル・ディランディの基礎能力の高さは…」なんですね。(しつこい)
そして本にした時点で、クラウスの設定をよく読んでいなかったので、いま辛い思いをしています……orz(自業自得)
|