眠れないのは君の所為


2004.10月 Web拍手にてUP



 

 愛を確かめ合う行為後、シャワーも浴びてすっきりしているというのに、和希は一人寝付くことが出来ずに、ベットの中からテレビを何気なく眺めていた。
 すると、夜中の番組の中で「彼の好きな所」という特集が目に入った。
 一位 優しいところ
 二位 顔
 三位 性格・気性
 一位と三位は同義語のような気もしたが、世の女性たちが男に何を求めているかは、いつの時代にも変わらないものだと、和希は納得した。
 ふと。
 隣に寝ている愛しい愛しい恋人は、自分の何処が好きなのかが気になりだした。
(そういえば、聞いたこと無かったな)
 自分は五月蝿いくらいにこの可愛い恋人の長所を上げ連ね愛を囁いているというのに、当の恋人からは何一つ自分に対する事を聞いたことは無いのは、少し納得がいかない。
 隣を見遣ると、既に比翼は夢の中。
 無邪気この上ない寝顔を晒している。
 だが、一度気になりだしたものは止められなかった。
「なあ、啓太」
 一度、普通に声をかけてみる。
 だが勿論、それに対する返事は無い。
 揺り起こすのも色気が無いので、頬を少しつついてみながら、再度声をかけてみた。
「・・・ん〜・・・なに〜?」
 寝ぼけながらも、何とか返答を得る。
「啓太は俺の何処が好き?」
 放っておくと、すぐにでもまた夢の世界へ帰還してしまいそうな啓太の頬を突き続けながら、素直に疑問を口にした。
「・・・和希の・・・なに?」
「だから、啓太は俺の何処が好きになったのか知りたいんだ」
 眠りに落ちていくのを邪魔する和希の指を払いながら、啓太は少し目を擦りながら考えている素振りを見せた。
「好きな・・・とこ」
「そう」
 3度返答を得た事で、和希はようやく頬をつつくのを止め、啓太の答えを興味津々で待つ。
「和希の・・・好きな・・・所は〜・・・・か・・・・」
「・・・か?」
「・・・・・zzzzz」
 就寝。
「え・・・?啓太?」
「zzzzzzz」
「『か』ってなに?なあ、啓太?」
「zzzzzz」
 謎の言葉を残して、啓太はまた夢の世界へと帰っていってしまった。
 『か』のつく、好きなところ。
 『顔』か。
 『体』か。
 それとも、一番考えたくは無いが『金』。
 『顔』ならまだいい。自身過剰ではなく、今までにもそれは和希自身、誉められる事の多かった部位だ。後は『体』。これもまあ、男として自身を持てることになる。そして『金』は、はっきりいって、一般庶民の感覚でいなくても平気なくらいは持っている。だが、これに好意を寄せられているのは、恋人としてというより、人としてかなり寂しい事だ。
「・・・頼むから『か』についてだけは説明してくれよ〜」
 寝つきと眠りの深さは自信があると、日ごろから豪語している啓太は、その言葉通り、一度眠ってしまったら中々起きることは無く。
 今発した言葉が、夢の中の言葉なのか、真実の言葉なのか。いや、それ以前に『か』の後に続く文字がなんなのか。
 子守唄代わりにつけていたテレビによって振られた話題に、和希は余計に眠れない夜をすごす羽目になった。

 

 

 

END




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