ご飯作るのは俺の担当。
食後の片付けは七条さんの担当。
洗濯は俺の担当。
掃除は七条さんの担当。
同棲と言う名の共同生活は3年目に突入したけど、最初からこの約束は変わらない。
理由は。
七条さんは食事をまともに考えないから。
俺は掃除が苦手だから。
お互いの苦手分野をフォローしてたら、こうなった。
だから、表面上はとても巧くいってる様に見える。
生活面での不満はないから。
でも、一つにして最大の問題がある。
「七条さん。今日は絶対一回で終わりですからね」
「わかりました、伊藤君」
平日の夜には、略当たり前の様に交わされる会話がこれ。
何が一回って…それは、夜の事。
同棲っていうからには、勿論体の関係だってある。
お互い恋愛感情があるんだから、当然と言えば当然。
全くないのは俺だって嫌だ。
でも、物事限度ってものがある。
風呂から上がって寝室に行くと、七条さんは既にベッドの中。
サイドライトで本を読んでいる。
「目、悪くなりますよ?」
「あれだけパソコンで酷使してて悪くならないんだから、大丈夫ですよ」
そんなもんなのかなぁ。
肩をすくめて俺も布団に入ると、待ってましたとばかりに伸ばされる腕。
でも、今日はちょっと嫌だなとか思う。
「今日はもう遅いからやだ」
時刻は夜11時48分。
明日の起床を考えると、俺的にはすぐに眠りたいのだ。
「君を愛してるんです」
「しちっ…」
『愛してる』って言葉は免罪符じゃないって言おうとしたら、キスで遮られた。
「んっ……んぅ…」
口内を貪られながらも、取りあえずパジャマの前を死守しようと手を動かす。
明日は6時には起きなきゃいけないから、今から寝たって6時間くらいしか寝られないのに。
これで七条さんとセックスなんかしたら、精々眠れて5時間だ。
俺は8時間は睡眠を取りたい人間なんだ!
で、ここが最大の問題になるんだ。
俺の人間的基本欲の優先順序は、食欲・睡眠・性欲で、七条さんの欲の優先順序が、食欲・性欲・睡眠。
些細な様で、これが結構な負担になる訳で。
しかも、七条さんはかなりの絶倫さん。
まともに相手なんかしてたら、身が保ちません。
「だか…らっ!もう12時近いんだってば!」
なんとかキスを振り解いて、布団の中で攻防に負けた手の代わりに、口の攻撃に出る。
「でも、君と一つの布団に入ってるのに、我慢出来る訳がないでしょう?」
「今日初めて一緒の布団で寝るみたいな事いわないで下さい!」
一緒に住みはじめた当初から、一つのベッドで寝ているのだ。3年も経って、俺はいい加減慣れてしまった。横には七条さんが寝てるのが当たり前で。当たり前の光景に、一々欲情なんかしない。
「だからっ!…ダメだって…やっ!」
七条さんも俺の攻撃なんて慣れたもんで、勝手に体を弄り始める。
それこそ3年も一緒に住んでて略毎日セックスしてる訳だから、俺の体の事なんて俺以上に詳しくなってて。
しかも、どうやったら俺が陥落するかも勉強済みと来たもんだ。
どうしてその勉強の方向を、俺の生活パターンとかにしてくれないのか。
「…ホントっ…やだっ」
頭と口では『嫌』ってなってても、もう体は七条さんの思うがまま。
しかも、俺の足には成長を遂げて立派な体積になってる七条さんの分身の感覚。
ここまで来たら、もう折れるしかない訳で。
「…一回、だけですからね」
「わかりました、伊藤君…愛してます」
あ…絶対一回じゃ終わらせる気がない。
七条さんが『愛してる』っていう時には、絶対俺の考えと違う事を考えてる証拠。
だから、先手必勝。
「必ず1時間で終わりにして下さい!」
抜かずの3発とかで、『挿入したのは一回ですよ』とか言われる前にぐっさり釘を刺しとくんだ。
それでも、俺の貴重な睡眠時間を愛の為に捧げるんだから!
結局。
当然1時間なんかじゃ終わらなかった訳で。
やっと眠りにつけたのは、時計が2時を指した頃。
もうすぐおやつの時間じゃーんとか、悲しい事を考えつつ眠りについた。
今日も満足のいく睡眠時間の確保は失敗に終わった。
布団の中の攻防戦は、いつでも圧倒的に七条さんが勝利を収めてしまう。
この同棲生活、そろそろやめようかと思いはじめた3年目です…。
END
|